教育とは動物をしつけるイメージと植物を育てるイメージ。私たちは、植物が育ってくるのを待つ心を忘れていないか?

これは、元文化庁長官で臨床心理学者の河合隼雄先生の言葉ですが、教育にかかわらず、人に関わる時の本質を突いた言葉のように思います。河合先生は、「どちらも大切ですが、植物のイメージで考えることの方は忘れられやすい」とも言っています。

心の問題を抱えた人への支援は、動物をしつける関わりで解決できなくなっているケースが多く、最終的に植物が育ってくるのを待つような気持ちになっているのではないでしょうか。そうすると、土壌はどうか、必要程度の栄養が与えられているか、外敵によって成長が妨げられていないか、などを検討する必要があるでしょう。子どもの立場になってみると気づくことがあるかもしれません。例えば、登校ばかりに捉われている家庭や学校の雰囲気などは子どもにどのように伝わるでしょうか。目に見えなくても焦らされるような雰囲気が、植物が育つ良い土壌(環境)と言えるでしょうか。そして植物が育ってくるには時間―「待つ」ことが必要です。しかし、最近では、動物や植物を超えて、「機械の壊れた部品を直すイメージ」でモノを言う人が増えてきているような気がします。カウンセリングに来て「どうやったら治(直)りますか?」と訊かれることは以前もありましたが、「ではどうやって?」と更に突き詰めていかれる方が増えたように思います。これは、機械や科学の発達、そして昨今のAIの発展なども背景にあるでしょう。また社会では問題解決思考など、問題を合理的に解決する重要性が盛んに言われています。このため、そのような発想になることも無理はないのですが、私たちも、人がまるで簡単に書きかえられるような思考に陥る可能性があることを自覚することも大切だと思います。周囲からの働きかけにより変化“させる”だけではなく、本人が自然に変化する条件を“整える”ことも大切のように思います。やはり自然に起こってくる変化の方が、その人が“自分で”手に入れた「本物」と言えるのではないでしょうか。

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