人は、心の中に色んな人のイメージをもっているから生きていける


 人は、生まれてから養育者と様々な交流をたくさんしています。それを少し紹介してみましょう。赤ちゃんは、不快感を感じると泣いて養育者を求め、養育者はおむつをかえたり、抱っこをしたりして安心できるように応えます。生後3ヵ月頃では、赤ちゃんは微笑むようになって養育者と感情の交流を始め、生後5ヵ月頃になると、人見知りをし始め、重要な存在である養育者とそうでない人を見分けられるようになっていきます。1歳前後にはハイハイや歩き始め、色んなことを知るようになっていきますが、まだまだ不安も大きく、養育者を「安全基地」として出かけては戻ってを繰り返していきます。この時点で、子どもは養育者が目の前からいなくなってしまうと、本当にいなくなってしまうのではないかと不安になります。しかし、このようなプロセスの中で、養育者は子どもの不安を受けとめることで、子どもの心の中に「養育者のイメージ」が「内在化」されていきます。そうすることで、3、4歳頃になると養育者が目の前から見えなくなっても大丈夫でいられるようになっていくのです。しかし、これはあくまで目安です。たとえ中学生であっても、養育者のイメージが充分に内在化されていないこともあります(養育者の育て方が原因とは必ずしも言えませんので、誤解のないようにお願いします)。子どもの発達には個人差があるので、慌てないことが何より大切です。そのような時に、養育者と無理に引き離すことは逆効果になることもあります(いわゆる分離不安)。このような場合、学校でも集団に入るのが難しければ、まずは信頼できる先生との一対一の関係から始めて徐々に慣らし、家が「安全基地」となるような配慮も大切でしょう。子どもが養育者イメージを内在化し、そこから多くの人との関係の中からイメージを内在化させていくことは将来の支えとなるでしょう。私たち大人も、自分の養育者だけでなく、多くの人のイメージを心の中にもっているから、困難があっても生きていけるのではないでしょうか。

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