親が子どもに「残すもの」と「残さない」もの

 臨床心理士 米村高穂

   最近私が考えているのは「家族」についてです。私たち臨床心理士は子どもから大人まで支援をするわけですが、どのような領域で活動しようとも家族の重要性は変わりません。本人の現在の家族関係はもちろんのこと、それまでの家族関係を知ることは本人の人となりを理解し、これからの対応を考える上でとても大切です。気を付けなければいけないのは、例えば「母(父)親が悪い」など、“責任論”にならないことです。心の問題を抱える人の中には、親だけでなく祖母、曾祖母まで遡って影響していることさえあります。今それを責めたところで解決するわけではないですし、時代背景もあり、やむにやまれぬ事情をはらんでいることもあるのです。しかし現実には、親が子どものためと思ってしたことが、却って子どもに“重荷”となっていることが、残念ながらあります。こうしたケースの場合、子どもが、親など自分が背負っている背景からどう“自律”するかを問われているのです。そのような方たちの話を聴いていると、私たち大人は、子どもに何を「残す」のか、そして何を「残さない」のか、一人の親としても考えさせられます。負の遺産はできるだけ抱えてあげたいところです。しかし、なかなかそうもいかないところもあります。だからせめて何を引き継ぐかは、私たち親だけではなく子どもたちにも決めさせてあげたいと思います。                                                (ニュースレター第18号より)

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