人は甘やかすとダメになるのか?自律を急いでいませんか?
私たち子どもに関わる人は、最終的には子どもが自分の人生を自分のものとして生きていくこと、つまり自律・自立を願っているというのは共通点でしょう。その反動からか、不登校の子たちや子どもに関わっている大人から「甘やかしている」という言葉をよく聞きます。先日、滋賀県東近江市長が「フリースクールが子どもをダメにしている」と発言したことがニュースになっていました。大抵の場合、このように批判的なニュアンスで使われているように思います。このような発言は、子どもたちや保護者への敬意に欠ける問題発言ですが、一方で私は、子どもたちが自律に向かうまでのステップを知らないことも問題だと思いました。
「発達は飛び級ができない」という言葉があります。人が本当に「自律」するまでにたくさんの経験が必要です。それを発達心理学では発達課題と言って、「段階」に分けているのですが、この点は見逃されているように感じます。だから、例えば学校に行けない状態にもかかわらず、「甘えるのはいけないこと」と思って、無理やり、もしくは子どもに交渉事を仕掛けて学校に連れて行くといった「一足飛び」のような対応になっているように思います。見た目は小・中学生だとしても、子どもの成長には個人差が大きいのです。これは不登校の有無に関係ありません。ある部分は、まだまだ幼児期の段階にあって「甘える」ことが何らかの形で必要な段階もあります。そうすると、「甘やかすな」という発言は、却って子どもの発達を阻害する言葉になる可能性もあります。「発達には段階があり、飛び級ができない」という認識も大切でしょう。充分に甘えられた子が大人になれば、「甘える」が「相談する」「助け合う」ことに繋がっていくと思います。そう考えると、むしろ子どもの頃は「うまく甘えること」も大事なのではないでしょうか。