よく「時間がかかる」と言うけど、「いつ」になったらこの状態が変わる?

臨床心理士 米村 高穂

このような疑問を多くの保護者は感じておられるのではないでしょうか。心という目に見えないものなので、保護者の方が不安になり、このような質問をされるのは当然ですね。そこで今回は、「時」について考えてみたいと思います。

少し難しくなりますが、心理学では、時を、時計で測れる時間である「クロノス」、時計では測れない質的なタイミングである「カイロス」という2つに分ける考え方があります。「クロノス」は、いわゆる普通の時間の流れですが、「カイロス」は時のめぐりがちょうどぴったり一致する時のことです。この「カイロス」は、日常の出来事に当てはめることもできます。例えば、子どもが言葉を覚える時期は、ある程度の目処は示されていますが、本人の元々の特性、保護者の関わりなど、様々なことが影響します。ある日突然変わること等は、まさに「クロノス」では測れない、「カイロス」と言えるのではないでしょうか。心について置き換えてみると、例えば「“6ヵ月”も経ったのに治っていないじゃないか?」という思いには、「クロノス」の視点だけに偏り、「カイロス」の視点が抜けているかもしれません。つまり、本人たちの内面の視点が抜けているのです。ご多忙で時間に追われている方こそ、「クロノス」の思考に偏るリスクが高まると思います。心の問題は、動くのが早すぎるとうまくいかない、「時が熟す」ことが必要です。「全然変わらない」と子どもにイライラをぶつけることを繰り返すことは、「時が熟す」のを遅らせてしまう可能性があります。だからこそ、専門家や信頼できる周囲の人と話すことで、立ち止まって自分のことを考えることが、結局は子どものためになると言えるのではないでしょうか。

 

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