学校に行かせることだけが目的になっていませんか?

臨床心理士 米村 高穂

不登校の子を無理矢理学校に行かせようとして状況が混乱したという経験したことはありませんか?不登校が形成されているメカニズムは、ざっくり言うと「X(原因)→学校に行っていない(結果)」と表現できます。このXは、本人の生まれ持っての気質、家庭・学校での環境等で形成された性格、ストレス等が当てはまります。学校に行かせることだけを目的とする対応は、Xを想定しないものになりがちです。例えば、「何時なら行けるのか」「テストは教室で受けた方がいい」等といった声かけです。このように学校へ行くことを本人と交渉したり押し問答し、一時的に学校に行けたとしてもまた休み始めることは多いのです。不登校傾向の子の多くは、学校に行かせることに必死な大人を警戒します。それがよくあらわれるのが行事をきっかけに登校させようとする時です。大人が本人の状態や意志を尊重していないと、行事をきっかけに学校に行けなくなってしまうことも多いのです。大人が、“本当の自分”を見ようとしないのですから、彼・彼女らは更に心を開かなくなり、余計に学校から遠ざかってしまいます。家に閉じこもることでしか自分を守れなくなってしまうのです。

学校に行くことは本来「目的」ではなく、本人の心身の成長を促すための「方法」であることは忘れてはいけないでしょう。また、大人も子どもがXを形成するのに一部加担してしまったという自覚も大切です。Xを見ない大人の心理には、自分を正当化したい保身が入り込んでいる可能性があります。それを慌てて辻褄合わせに走った結果、学校に行くことを拙速に求めてしまうのです。

ところで、このXとは何でしょう?Xは、皆さんにとって“大切な人の心”です。“心抜き”の対応を、私たちも無自覚のうちにしてしまっていないか。私たち大人は、このXを少しずつ染み渡るようにわかってくることが大切です。不登校を乗り越えた保護者の多くが持つ「待つ姿勢」の中には、即行動・即結果よりも「状況を丁寧に理解しようとする姿勢」があるように思います。

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