「勝手に決めないで」と言われないため

臨床心理士 米村 高穂

「なんで勝手に決めるの!?」―こんな言葉を言われたり、思わず言ったりしたことはありませんか?こうした言葉への反論は、「あなたのためにやったんだよ」というのが多いようです。問題は、相手に「確認を取っていない」ことです。自分がどれだけ良かれと思ってやったことでも、相手にとっては気分が良いものではありません。このことに無自覚だと、どうしても相手との関係がうまくいきません。なぜなら、相手は「自分にも考えがあるのに聴いてもらえなかった」と感じ、結果的に“押し付け”と捉えやすいからです。どれだけ自分の考えに自信があったとしても、本人の意向を確認せず進めてしまうのは危険なのです。もしかしたら“手間”のように感じてしまうかもしれませんが、そのような確認は「自分のことを気にかけてくれている」という“尊重”として伝わるものです。長い目で見れば報われることの方が多いようです。但し、こちらは“確認”をしているつもりでも、焦って言ってしまえば、相手には「ゴリ押しされた」と伝わってしまうことがあります。また、「断られるのが嫌だから確認しなかった」という意見もあります。これも一理ありますが、命に関わるような緊急事態でなければ、やはり“拒否する権利”を守ってあげることも大切ではないでしょうか。医療研究の倫理審査をしている方の話だと、研究に協力してくれる人が「拒否できない」研究は倫理違反なのだそうです。

(ニュースレター第19号より)

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