「メンタルが弱い」という言葉について思うこと

臨床心理士 米村高穂

「あいつはメンタルが弱い」―最近色んなところで聴く言葉です。以前から、この「メンタルが弱い」という言葉について思うことがありました。支援をしている私たちからすると何をもって“メンタル”と言っているのか、“弱い”とはどういうことなのかがわかりにくい。場合によっては人を傷つける言葉だと思います。

逆に「メンタルが強い」というのは、「何事があってもぶれない人」をイメージしていませんか?しかしそういう人をよくよく観察してみると、自分にとって不快になることを見ないようにしたり、割り切ることでごまかしていることも多い印象を受けます。だから不安定にならないで済むのでしょう。一つ誤解しないで頂きたいのは、このような一種の“ごまかし”はある程度は必要なのです。そうでないと心が常に“戦闘態勢”(葛藤状態)になってしまい、疲れてしまうからです。メンタルが弱い人という中には、“ごまかし”をせず、心の奥では常に戦っている人たちもたくさんいます。それを、表面だけを見て「メンタルが弱い」と言ってしまうのは考えものではないでしょうか?発達心理学の大日向雅美先生は、「人は気持ちが揺れるからこそ、相手の気持ちに共感できる」とおっしゃっています。私は、“ぶれない強いメンタル”よりも、メンタルがぶれて“一緒に耐え忍ぶメンタル”の方が、心が豊かになると思えてなりません。

 

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